米国のトランプ大統領は、電子タバコを吸ったことが原因とみられる疾患で死亡者が出ていることを重くみて、電子タバコのリキッドに味付けした製品の販売を禁止する方針を発表した。だが、日本でも加熱式タバコのスティック製品の約8割が味付けであり、対岸の火事ではない。

電子タバコが米国で蔓延した理由

ニコチンを添加したリキッドを蒸気にして吸い込むタイプの電子タバコは、欧米各国で急速に広まった。特に米国では若い世代を中心に電子タバコ使用を含む喫煙率が上昇に転じている。

米国で電子タバコが広がっている理由は、やはりメンソールやチョコレート味などの味付けで若い世代を取り込み、タバコ製品特有のニコチンにより、薬物依存にさせて電子タバコを止められなくさせるビジネスモデルが奏功したからだ。

電子タバコ会社のマーケティングは、紙巻きタバコでタバコ会社がやってきた方法そのものだ(※1)。電子タバコは紙巻きタバコの効果的な拡散方法を模倣し、中高生などの若い世代をターゲットにして訴求した(※2)。

若い世代は刺激的なものに惹きつけられやすい。従来の紙巻きタバコはもちろん、電子タバコは味付き(Flavor)の多種多様な製品群を用意し、若い世代が手に取りやすくしている。

だが、電子タバコのリキッドに添加された香料などの中には、健康に害を及ぼす危険な物質も多い(※3)。日本で喫煙者が増えている加熱式タバコも同じだ。ヒートスティックやタバコ・カプセルなどの製品は、その約8割がメンソールやフルーツなどの味付きになっている。

加熱式タバコと同じ

また、タバコ製品に特有のニコチンによる薬物依存も重要なファクターだ。数年で急速にシェアを伸ばしたJUULという電子タバコがあり、2016年から2017年にかけて米国で急速にシェアを拡大している(※4)。

JUULのリキッドはニコチン濃度が高く、JUULを製造販売している企業はニコチンを急速に吸収させて依存性を強める技術的な特許を持っている(※5)。こうして効率的かつ効果的にニコチンを摂取させることで電子タバコに手を伸ばした若い世代がニコチン依存になってしまった。JUULが米国内で広く喫煙されるようになり、その他の電子タバコを吸う喫煙者も急速にふえていったというわけだ。

日本では紙巻きタバコのアイコス(IQOS)がJUULの役割を果たしたといえる。日本で加熱式タバコが広まった理由は、米国の電子タバコと全く同じだ。

重篤な病気になる喫煙者が増えないうちに、日本も米国政府に倣って加熱式タバコの味付けを禁止すべきだ。