概要

 福岡市早良区の交差点に車が猛スピードで突入し、運転していた80代男性と同乗の70代女性が死亡した事故で、福岡県警は5日、2人は同区の小島吉正さん(81)と妻節子さん(76)と明らかにした。県警は自動車運転処罰法違反(過失致死傷)の疑いも視野に入れて捜査。車の実況見分や目撃情報の精査を進め、事故の原因を調べている。

 小島さんが最近、周囲に対し「高齢者の事故が多いので運転免許の返納をしなければいけないのだろうか」と伝えていたことも判明。近くに住む女性によると、小島さんは自治会長を務め、地域活動を熱心にしていた。

 事故は4日午後7時ごろ発生した。

事件の様子

逆走した車が、猛スピードで交差点に突っ込んだ」。福岡市早良区の交差点で4日発生した多重衝突事故。2台の車は人通りの多い歩道に乗り上げ、割れたガラスや車の部品が散乱した。通行人は力を合わせ、ひっくり返った車に閉じ込められた人たちを懸命に救出した。家路を急いでいた歩行者は、目の前の惨事に声を震わせた。

近くのファミリーレストランで食事をした帰りだったスポーツトレーナーの佐藤美代さん(39)=同区=は「ドーン」「ガシャン」という大きな音を聞いて駆け付けた。現場には「キャー」という女性の悲鳴が響いた。学習塾などが面する歩道には乗用車がひっくり返り、道路上にも衝突されたとみられる車が停車。1台の車には男性2人が閉じ込められていた。通行人が次々と集まり、力を合わせて車を持ち上げ、2人を助け出したという。「男性は頭から血を流していた。『助けなきゃ』という一心でした」

現場の交差点では大勢の人が信号待ちをしていた。会社員松尾美紀さん(39)も、車が横転しながら歩道に突っ込んでいく様子を目の当たりにした。車の下敷きになった男性が「助けてくれ」と叫び、男性の元には、学習塾からタオルやはさみを持った人々が駆け付けた。「『大丈夫ですよ』と声を掛けながら、20人くらいで助け出していた」と状況を語った。

 目撃した男性(64)によると、逆走した乗用車に乗っていた高齢の男女は意識がなく、心臓マッサージを受けていた。小学校高学年くらいの女児と母親とみられる女性が乗っていた車も事故に巻き込まれたとみられるが、2人とも意識がはっきりしており、自力で歩いていたという。

飛んできた破片に当たって流血した歩行者もいた。現場近くの飲食店「博多めんちゃんこ亭」のアルバイト女性(21)は「雷が落ちたような音だった。店の隣の柱に車が衝突していて、あと数センチでうちの店に突っ込んでいた」とおびえた様子で話した。

帰宅途中だった男性会社員(40)は「現場の交差点は普段から運転が荒い車が多く、日頃から気を付けていた」。60代の主婦は「また高齢者が絡んだ事故でしょうか。怖いです」と話した。